インターナショナルスクールは、主に日本在住の外国人子弟や帰国子女を対象とし、英語などの外国語で授業を行う教育施設です 。近年では、グローバル化の進展に伴い、日本人家庭からも早期英語教育や国際感覚の涵養を目的として注目が集まっています 。しかし、その一方で「学費が高額」というイメージも根強く、具体的な費用や利用可能な支援制度について情報を求める声が多く聞かれます 。

本レポートは、「インターナショナルスクール 学費」というキーワードに加え、「無償化」「幼稚園」「安い」「補助」「東京」「平均」といった関連検索キーワードへの回答を網羅することを目指します。日本全国および東京都内におけるインターナショナルスクールの平均的な学費水準、学費が高額になる理由、利用可能な補助金や無償化制度、そして比較的学費が安いとされる学校の事例とその背景について、収集した情報に基づき詳細に分析・解説します。これにより、インターナショナルスクールへの進学を検討する保護者が、費用面での不安を解消し、各家庭の状況に合った最適な学校選択を行うための一助となることを目的とします。

インターナショナルスクールの学費:全国および東京の平均と内訳

インターナショナルスクールの学費は、一般的に日本の公立・私立学校と比較して高額になる傾向があります 。その具体的な水準と内訳を把握することは、教育計画を立てる上で不可欠です。

全国的な学費相場と東京の平均

全国的に見ると、インターナショナルスクールの年間授業料の相場は150万円から300万円程度とされています 。特に東京都内では物価の高さも影響し、学費が高くなる傾向が見られ、年間平均学費は約179万円、あるいは200万円から250万円程度が相場とされています 。小学校から高校までの12年間通わせた場合、年間の学費を200万円と仮定すると、総額は約2,400万円に達する計算になります 。これは、同様の期間を日本の私立学校(小学校から高校)で過ごした場合の約1800万円、公立学校の場合の約500万円と比較しても、際立って高額であることがわかります 5

学年別の学費傾向(東京都の例)

学費は、学校や地域だけでなく、子どもの年齢(学年)によっても変動します。東京都内のインターナショナルスクールの学費を学年別に見ると、以下のような総額の目安が示されています 。

  • 小学校(6年間)総額:約1074万円
  • 中学校(3年間)総額:約537万円
  • 高校(3年間)総額:約539万円
  • 小学校〜高校(12年間)総額:約2148万円

個別の学校の例を見ると、より具体的な学年別の費用感が掴めます。

例えば、アメリカンスクール・イン・ジャパン(ASIJ)では、ナーサリー(3-4歳)で年間約496万円、キンダー(5歳)~小学5年生で約517万円、ミドルスクール(6-8年生)で約528万円、ハイスクール(9-12年生)で約537万円(初年度、入学関連費用含む)となっています 。他の主要なスクールでも、幼稚部(キンダーガーテン)から高等部(ハイスクール)にかけて、年間200万円台後半から500万円を超える費用がかかるケースが多く見られます 。

学費の内訳:授業料以外に必要な費用

インターナショナルスクールの「学費」として考慮すべきは、授業料だけではありません。以下のような費用が別途必要となることが一般的です 。

  • 受験料・申込金: 2万円~5万円程度
  • 入学金・登録料: 20万円~50万円程度、学校によってはそれ以上
  • 施設利用料・維持費・開発費: 年間10万円~60万円程度、入学時に別途高額な施設関連費用がかかる場合も
  • 教材費・実習費: 年間5万円~50万円程度
  • その他: スクールバス代(年間10万円~30万円程度)、給食費、制服代、課外活動費、保護者会費、英語サポート費用(必要な場合)など

これらの費用を合計すると、年間の総負担額は授業料に加えて数十万円から百万円以上増加する可能性があるため、総額での資金計画が重要となります。

東京の主要インターナショナルスクールと学費一覧

東京都内には数多くのインターナショナルスクールが存在し、それぞれ特色ある教育を提供しています。ここでは、代表的なスクールの所在地と、公開されている情報に基づくおおよその年間授業料(主に小学校・中学校レベル)をいくつか紹介します。ただし、学費は年度や学年、選択コースによって変動するため、必ず各学校の最新情報を公式サイトで確認する必要があります。

学校名所在地年間授業料(目安)認定等(例)
清泉インターナショナルスクール世田谷区約215万円~235万円IB, CIS, NEASC
聖心インターナショナルスクール渋谷区約217万円~226万円WASC, CIS, ACSI
西町インターナショナルスクール港区約251万円~296万円WASC, CIS
東京インターナショナルスクール港区約263万円~278万円IB (PYP/MYP), CIS, NEASC
セント・メリーズ・インターナショナル世田谷区約238万円~255万円(男子校)IB, CIS, WASC
ブリティッシュ・スクール・イン・東京渋谷区等約260万円~274万円ISI
カナディアン・インターナショナル品川区約195万円~275万円IB (PYP), CIS, WASC
ケイ・インターナショナルスクール東京江東区約230万円~260万円IB (PYP/MYP), CIS, NEASC
アメリカンスクール・イン・ジャパン調布市等約284万円~301万円WASC
アオバジャパン・インターナショナル練馬区等約190万円~319万円IB (PYP/MYP/DP), CIS, NEASC
品川インターナショナルスクール品川区約200万円~220万円(記載なし)

注意: 上記の授業料はあくまで目安であり、入学金、施設費、その他の費用は含まれていません。最新かつ正確な情報は各学校の公式ウェブサイトでご確認ください。認定資格も変更される可能性があります。

なぜインターナショナルスクールの学費は高いのか?

インターナショナルスクールの学費が高額になる背景には、いくつかの構造的な要因が存在します。

  1. 少人数制クラスと手厚い指導体制: 多くのインターナショナルスクールでは、生徒一人ひとりに目が行き届くよう、1クラスあたりの生徒数を少なく設定しています 。これにより、教員の数は日本の一般的な学校よりも多く必要となり、人件費が増加する一因となります。
  2. 税制優遇や補助金の欠如: 日本の学校教育法第一条で定められた「一条校」として認可されていないインターナショナルスクールは、原則として国や地方自治体からの補助金や税制上の優遇措置を受けることができません 。学校運営にかかる費用のほぼ全額を、保護者が負担する学費で賄う必要があるため、結果的に学費が高額になります。
  3. 独自のカリキュラムと国際認定: 国際バカロレア(IB)やケンブリッジ国際、あるいは特定の国のカリキュラムなど、独自の教育プログラムを採用・維持するには、教材開発やプログラム導入・認定維持にコストがかかります 5。また、国際的な評価団体(WASC, CIS, NEASCなど)の認定を取得・維持するためにも費用が必要です。これらの認定は教育の質を保証する一方で、学費に反映される要因ともなります。
  4. 優秀な教員の確保: ネイティブレベルの語学力を持ち、国際的な教育資格や経験を持つ優秀な教員を国内外から採用・維持するためには、相応の報酬水準が必要となります 。これも人件費を押し上げる要因です。
  5. 充実した施設・設備: グローバルスタンダードに対応した学習環境を提供するため、最新のICT設備、図書館、スポーツ施設、アート施設などに投資している学校が多く、これらの維持管理費も学費に含まれます 。
  6. その他: 多様な国籍の生徒を受け入れるためのサポート体制や、海外大学進学に向けたカウンセリング、特色ある課外活動なども、運営コストを増加させる可能性があります。

これらの要因が複合的に作用し、インターナショナルスクールの学費は日本の公立・私立学校と比較して高額な水準となっています。

学費負担を軽減する制度:無償化・補助金・奨学金

高額なインターナショナルスクールの学費負担を少しでも軽減するために、いくつかの支援制度が存在します。ただし、利用には条件があり、全ての家庭や学校が対象となるわけではありません。

幼児教育・保育の無償化(幼稚園・プリスクール年代)

2019年10月に開始された「幼児教育・保育の無償化」制度は、インターナショナルスクール(特にプリスクールや幼稚園部)にも適用される場合があります 。

  • 対象: インターナショナルスクールが「認可外保育施設」として自治体に届け出を行い、国の定める基準を満たしている場合、無償化の対象施設となります 。キンダーキッズインターナショナルスクール やアオバジャパン・バイリンガルプリスクール など、対象施設であることを明示しているスクールもあります。
  • 条件:
  • 子どもが3歳から5歳であること(住民税非課税世帯は0歳から2歳も対象)。
  • 保護者が就労、疾病などの理由で「保育の必要性の認定」をお住まいの市区町村から受けていること 。専業主婦(夫)家庭は原則対象外となります 。
  • 補助額: 月額37,000円(0~2歳児の非課税世帯は月額42,000円)を上限として利用料が補助されます 。全額が無償になるわけではなく、上限額までの補助という点に注意が必要です。
  • 注意点:
  • 全てのインターナショナルスクールが対象施設とは限りません。自治体への届け出や基準充足が必要です 。株式会社や有限会社として運営され、届け出がない場合は対象外となる可能性があります 。
  • 補助の対象は保育料(授業料)のみで、給食費やバス代、入学金などは対象外です 。
  • 申請手続きが必要であり、詳細は居住地の自治体に確認する必要があります 。

この制度により、条件を満たす家庭では、プリスクールやインターナショナルスクール幼稚園部の費用負担が年間で最大444,000円軽減される可能性があります 。

高等学校等就学支援金(高校年代)

高校段階(インターナショナルスクールの高等部)では、「高等学校等就学支援金」制度の対象となる場合があります 。

  • 対象: 文部科学大臣が指定する各種学校や、特定の国際的な評価団体(WASC, ACSI, CIS, NEASC, 国際バカロレア(IB)など)の認定を受けているインターナショナルスクールが対象となり得ます 。対象校リストは文部科学省のウェブサイトで確認できます 。
  • 条件:
  • 日本国内に住所を有し、対象となる学校の高等部等に在学していること。
  • 保護者の所得に関する要件を満たすこと(例:年収約910万円未満)。
  • 支援額: 所得に応じて支援額が異なり、年収約910万円未満の世帯で年間11万8,800円、年収約590万円未満の世帯では年間最大39万6,000円(私立高校の平均授業料を勘案した額)が支給されます 。
  • 東京都独自の制度: 東京都では、国の就学支援金に加え、独自の授業料軽減助成金制度があり、2024年度からは所得制限が撤廃され、都内私立高校の平均授業料相当額(約48万円)を上限に支援が受けられるようになっています 。インターナショナルスクールがこの都の制度の対象となるかは、個別の確認が必要です。
  • 注意点:
  • 全てのインターナショナルスクールが対象ではありません。国際的な認定を受けていない学校は対象外です。
  • 支援金は授業料に充当されるものであり、入学金や施設費などは対象外です。
  • 所得制限があり、基準を超える場合は対象となりません 。

この制度を利用できれば、高校段階での学費負担を大きく軽減できる可能性があります。

学校独自の奨学金制度

上記の公的支援に加えて、インターナショナルスクールが独自に奨学金制度を設けている場合があります 。

  • 種類: 学業成績優秀者、スポーツや芸術分野で優れた才能を持つ生徒、経済的に困難な状況にある家庭などを対象とした奨学金があります 。返済不要の給付型と、返済が必要な貸与型があります 。
  • 内容: 授業料の一部または全額が免除・減額される場合があります 。
  • 申請: 募集時期、申請条件、選考基準は学校ごとに異なります。成績基準(例:評定平均3.5以上など)や世帯収入の基準が設けられていることが多いです 。
  • 情報収集: 各学校のウェブサイトやアドミッションズオフィスに問い合わせて、利用可能な制度があるか確認することが重要です。

その他の注意点

  • 小・中学校段階: インターナショナルスクールが「一条校」として認定されていない限り、日本の義務教育とはみなされず、公的な授業料無償化の対象にはなりません 。
  • オンラインスクール: 費用を抑える選択肢として、オンラインのインターナショナルスクールも存在します 。

これらの支援制度を最大限活用するためには、早期からの情報収集と、各制度の条件や申請方法を正確に理解することが不可欠です。

学費が比較的安いインターナショナルスクール(東京)とその理由

インターナショナルスクールの学費は高額な傾向がありますが、中には年間授業料が平均よりも低い、比較的「安い」とされる学校も存在します。ただし、「安い」からといって安易に選ぶのではなく、その理由と注意点を理解することが重要です。

都内で比較的学費が安いとされる学校例

いくつかの情報源によると、東京都内には年間授業料が100万円未満、あるいは100万円前後のインターナショナルスクールも存在するようです 。以下はその例ですが、情報は変動する可能性があるため、必ず最新情報を各校にご確認ください。

学校名所在地年間授業料(目安)特徴・注意点(推測含む)
エベレストインターナショナルスクール杉並区等月5~7万円 (年60万~)インド式カリキュラム・ ケンブリッジ式も提供。非常に安価だが詳細確認要。
インディアインターナショナルスクール江東区約60万円?インド式カリキュラムの。詳細確認要。
キャメロットインターナショナルスクール板橋区約81万円カリキュラム、認定状況など詳細確認要。
東京IQRAインターナショナルスクール葛飾区約84万円イスラム系 カリキュラム、認定状況など詳細確認要。
目白インターナショナルスクール新宿区約87万円プログラムにより変動。カリキュラム、認定状況など詳細確認要。
ニューインターナショナルスクール豊島区約190万円マルチエイジ教育、バイリンガル教育。比較的安価だが、一般的なインター校よりは高め。

注意: 上記情報は限定的であり、特に授業料は変動する可能性があります。必ず各学校の公式サイトで最新かつ正確な情報を確認し、カリキュラム、認定、施設などを総合的に評価してください。

なぜ学費が安い?考えられる理由と注意点

これらの学校の学費が比較的安価である背景には、以下のような理由が考えられます。

  • カリキュラムと国際認定: 高額なライセンス料や維持費が必要となる国際バカロレア(IB)のような国際カリキュラムではなく、特定の国のカリキュラム(例:インド式 )を採用していたり、国際的な評価団体(WASC, CISなど)の認定を受けていない場合があります。認定がない場合、教育の質に関する外部評価が不明確になるほか、高校段階での就学支援金の対象外となる可能性があります。
  • 施設・設備: 都心の一等地に広大なキャンパスを持つような学校と比較して、施設や設備が簡素である可能性があります。最新設備への投資を抑えることで、運営コストを削減していると考えられます。
  • 教員の構成や報酬: 教員の採用基準や報酬体系が、高額な学費の学校とは異なる可能性があります。
  • 運営母体や資金調達: 特定のコミュニティ(例:宗教、国籍)による支援や、独自の資金調達方法を持っている可能性があります。
  • オンラインオプション: 通学型ではなく、オンライン形式でプログラムを提供することで、施設費や人件費を抑えているケースもあります 。

注意点:

学費の安さだけで学校を選ぶことにはリスクも伴います。保護者は以下の点を十分に調査・検討する必要があります。

  • 教育の質とカリキュラム: 提供されるカリキュラムが子どもの教育目標に合っているか、教員の質は十分かを確認する必要があります。
  • 国際認定の有無とその影響: 国際的な認定がない場合、海外大学への進学や、国内での単位互換、高等学校等就学支援金の受給資格などに影響が出る可能性があります。
  • 施設や環境: 実際に学校を訪問し、学習環境や設備を確認することが望ましいです。
  • 義務教育の認定: 日本の義務教育課程として認められるか否かは、特に将来的に日本の学校への編入を考える場合に重要です 。一条校として認定されていない場合、インターナショナルスクールでの就学は日本の義務教育を履行したことにならない場合があります 。

費用を抑えることは重要ですが、それが教育の質や将来の選択肢を狭める結果にならないよう、多角的な視点から学校を評価し、家庭の教育方針や子どものニーズに最も適した学校を選ぶことが肝要です。

まとめ:インターナショナルスクールの学費を理解し、家庭に合った学校選びを

本レポートでは、インターナショナルスクールの学費に関する様々な側面を分析してきました。最後に、主要なポイントをまとめます。

  • 高額な学費: インターナショナルスクールの学費は、日本の公立・私立学校と比較して著しく高く、特に東京都内では年間平均200万円を超えることが一般的です 。これに入学金、施設費、教材費などが加わり、総額はさらに増加します 。
  • 変動要因: 学費は学校の所在地(都心部で高い傾向)、提供するカリキュラム、施設の充実度、国際認定の有無、そして学年によって大きく異なります 。
  • 高額な理由: 少人数制、優秀な教員の確保、独自のカリキュラム維持、充実した施設、そして一条校でないことによる公的補助の欠如などが、学費を高騰させる主な要因です 。
  • 限定的な支援制度: 学費負担を軽減する制度として、「幼児教育・保育の無償化」(認可外保育施設として登録され、保育の必要性が認定された3~5歳児が対象、月額上限あり)、「高等学校等就学支援金」(国際認定を受け、所得要件を満たす高校生が対象)、そして学校独自の奨学金制度 がありますが、利用にはそれぞれ条件があります。
  • 安価な選択肢の存在と注意点: 年間100万円前後の比較的安価なインターナショナルスクールも存在しますが 30、その背景にはカリキュラムや認定、施設の差がある可能性が高いです。学費だけでなく、教育の質や将来の進路への影響を十分に検討する必要があります。

インターナショナルスクールへの進学は、子どもに国際的な視野と高度な語学力を身につけさせる大きな機会となり得ますが、同時に長期にわたる多額の経済的負担を伴います 。学校選択にあたっては、目先の学費だけでなく、入学から卒業までにかかる総費用を試算し、家計への影響を慎重に評価することが不可欠です。

さらに、費用面だけでなく、各学校の教育理念、カリキュラム、進学実績、校風などが、家庭の教育方針や子どもの個性、将来の目標と合致しているかを見極めることが最も重要です 。本レポートで提供した情報が、各家庭にとって最適な教育環境を選択するための一助となれば幸いです。