近年、日本国内でインターナショナルスクールの開校が相次ぎ、その数は初等部から高等部まで備えるものだけでも約80校に上ると言われています。例えば、千葉県のラグビースクールジャパンや岩手県のハロウインターナショナルスクール安比ジャパン、東京都のマルバーン・カレッジ東京など、英国系スクールの新設が注目を集めています。海外経験や英語力を生かした教育環境で「真のグローバル人材に育てたい」と考え、インターナショナルスクールへの進学を検討する日本人家庭も増えています。しかし一方で、日本の学校制度上「一条校」との関係や認可の違いについて理解しておくことも重要です。本記事ではインターナショナルスクールと一条校の違い文部科学省による認定制度、さらに認定された学校の一覧や進学時の注意点について中立的に解説します。

インターナショナルスクールとは

インターナショナルスクールとは主に英語など外国語で授業を行い、外国籍の子どもを中心に受け入れる教育施設です。その多くは日本に住む海外駐在員や帰国子女のために設立されており、カリキュラムも英国式や米国式など本国の教育課程に沿って編成されています。学年暦も日本の学校とは異なり、8月に新学期が始まり翌年6月に終了する二学期制を採用する学校が多いことも特徴です。卒業後は海外の高校や大学へ進学する生徒が多いため、多くのインターナショナルスクールが**国際的な認定機関による認定(国際認定)**を受けており、大学進学のためのカウンセリング体制も整えています。こうした国際校では先進的なICT教育やバイリンガル環境によって、日常から多様な文化に触れながら学ぶことができます。

学校教育法とインターナショナルスクール

日本では「学校教育法」によって学校の種類や設置基準が定められていますが、実はインターナショナルスクールに関しては法律上の明確な定義がありません。一般的にインターナショナルスクールの多くは、日本の教育行政から見ると私立学校または各種学校として扱われます。具体的には、多くのインターナショナルスクールは学校教育法第134条に規定される「各種学校」として各都道府県から認可を受けています。ただし一部には、後述する学校教育法第1条に規定された学校(いわゆる一条校)として認可されている例もあります。また、ごく少数ですが設置認可を受けておらず無認可で運営されている教育施設も存在します。このようにインターナショナルスクールは日本の学校制度上さまざまなカテゴリーに分かれており、その認定状況によって法的な位置づけや保護の程度が異なるのです。

一条校とは

一条校とは、学校教育法第1条に定められた正式な学校のことを指す通称です。具体的には、小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・大学・高等専門学校・幼稚園(現在では義務教育学校や特別支援学校も含まれます)など、日本の法律で「学校」と認められる教育機関のことです。これら一条校は国公私立を問わず法的な保護を受けており、社会的に公的な教育機関として位置付けられます。インターナショナルスクールであっても、日本の文部科学省から一条校として認定を受ければ法律上は正式な学校として扱われます。しかし現状では、インターナショナルスクールの大半が一条校に該当せず、後述する各種学校扱いまたは無認可となっている点に注意が必要です。なお、一条校以外の各種学校は自動車教習所や各種専修学校と同じ分類に位置付けられるため、公的支援や卒業資格の面で一条校とは異なる扱いになります。

一条校認定がないインターナショナルスクールに通う際の注意点

日本の法律では、保護者には子どもに対し「小学校や中学校など義務教育の課程」に就学させる義務(就学義務)があります。つまり、日本国籍の子どもが一条校として認められていないインターナショナルスクールに通学した場合、法律上は保護者がその就学義務を果たしたことにはならないのです。このため、小学校課程をインターナショナルスクールで終えた後に日本の公立中学校(一条校)へ進学することや編入することが認められないケースがあります。特に一条校ではないインター校の小学部を卒業しても、日本の義務教育課程を修了したとはみなされず、原則として公立中学校への入学資格が認められない点に注意が必要です。ただし実際には、居住地域の教育委員会や受け入れ校の判断で編入や受験が特例的に許可される場合もあります。また最近では、東京都の名門校である開成中学がインターナショナルスクール出身者にも門戸を開く方針を示すなど、従来の運用が見直される動きも出ています。このような例はありますが、基本的にはインターナショナルスクール在籍中の公立校への転校日本の学校への進学は簡単ではないと認識しておきましょう。なお、インターナショナルスクールが各種学校や無認可校の場合、学生割引の通学定期券が発行できないなど日常生活上の不便(学校として公的に認められていないことによる制約)も生じます。国際的な教育環境には魅力がありますが、こうした法的・制度的なリスクも踏まえて進路選択をすることが大切です。

インターナショナルスクールの認可制度と種類

インターナショナルスクールはその認可(認定)制度によって大きく3つの種類に分けられます。以下に各カテゴリーの概要と例を一覧で紹介します。教育の質や卒業後の資格、法的な扱いが異なるため、違いを把握しておきましょう。

文部科学省認定の一条校インターナショナルスクール

文部科学省および所管の教育委員会から正式に一条校として認可されたインターナショナルスクールです。数は多くありませんが、日本の学校と同等の卒業資格を得られる点が最大のメリットです。授業は英語が中心でも法律上は日本の正規の学校扱いとなるため、卒業時に日本の小中高の卒業証書が発行され、高校であれば大学受験資格も日本の高校と同様に認められます。例えば以下のような学校が挙げられます。

  • 群馬県の群馬インターナショナルアカデミー(公立の英語イマージョン校。一貫教育で小学校~高等学校相当を提供)
  • 広島県の広島叡智学園中学校・高等学校(公立の全寮制グローバル校。英語によるIB課程を実施)
  • 沖縄県の沖縄アミークスインターナショナル(私立の一貫校。英語環境で小中学校課程を提供し県の認可を取得)
  • 大阪府の関西学院千里国際中等部・高等部(私立校。元々外国人学校だった部門を一条校化し、国内外両方のカリキュラムを併設)

一条校インターナショナルスクールは上記のように地方自治体や学校法人によって設立されたケースが多く、東京都内には現在、一条校として認可された純粋なインターナショナルスクールは存在しません。そのため東京の家庭でインター校を希望する場合は、次に述べる各種学校扱いのスクールに通うケースが一般的です。

各種学校として認可されているスクール(インター校の大半)

大多数のインターナショナルスクールは各都道府県から各種学校(学校教育法第134条)としての認可を受けて運営されています。各種学校は自動車学校や専門学校と同じカテゴリですが、教育内容は学校ごとに独自で決められるため、インターナショナルスクールの場合は海外のカリキュラムを柔軟に導入できる利点があります。各種学校認可校は法律上の「学校」ではないため、日本の小中高の卒業資格は得られませんが、多くの学校が海外の正規の学校としての認定や国際バカロレア等の資格を取得しており、卒業生はその資格で海外大学への進学や日本国内のインターナショナル大学校への進学が可能です。東京・神奈川をはじめ全国の主要なインターナショナルスクール(例:アメリカンスクール・イン・ジャパン<東京>、聖心インターナショナル<東京>、インターナショナルスクール・オブ・神戸 など)はこの各種学校に該当します。各種学校であっても一定の設置基準や財務状況の審査を経て認可されているため無認可校に比べれば安心感はありますが、公的助成や学割など一条校向けの制度は利用できない点は認識しておきましょう。

無認可のインターナショナルスクール

一部では、所管行政からいかなる学校認可も受けずに運営されているインターナショナルスクール(無認可校)も存在します。無認可校は設置基準の審査を通過していないため、教育内容や施設面で公的なチェックが入っていないケースがあります。その反面、カリキュラムや入学の柔軟性は高い傾向にありますが、在籍しても日本の学校卒業資格は得られず、法的にも「学校」として扱われないため各種優遇措置の対象外となります。無認可であっても質の高い教育を提供している学校もありますが、保護者としては学校選びの際に認可状況を確認し、無認可の場合は特にその学校の実績や運営母体の信頼性を慎重に見極める必要があります。

インターナショナルスクールに通うメリット

ここまでインターナショナルスクールの制度面の注意点を述べましたが、もちろんインター校ならではのメリットも数多く存在します。第一に、多文化環境で語学力や国際感覚を養えることは大きな利点です。日常的に英語でコミュニケーションをとることで高い語学力が身に付き、異文化理解力や多様性を尊重する姿勢が自然と育まれます。第二に、各インターナショナルスクールが導入しているIB(国際バカロレア)やIGCSEなどの国際認定カリキュラムにより、海外の学校と互換性のある教育を受けられる点も魅力です。これにより、将来的に留学や海外大学進学を目指す場合にもスムーズに対応でき、日本にいながらにして世界標準の教育資格を取得できます。さらに、ICT教育や探究型学習など先進的な教育手法を取り入れている学校が多いことも特徴で、創造力や主体性といった21世紀型スキルを伸ばす機会が豊富です。このようにインターナショナルスクールはグローバル社会で活躍する人材育成に適した環境を提供しているため、認可上のハードルはあるものの多くの家庭が魅力を感じているのです。

おわりに

インターナショナルスクールと一条校の関係や認可制度について、概要とポイントをご紹介しました。インターナショナルスクールは魅力的な教育環境を備える一方で、日本の教育制度との違いからくる法的な注意点や進路上の課題も存在します。大切なのは、お子さんの将来像や家庭の方針に合わせて最適な選択肢を見極めることです。国内の一条校認定校や各種学校認可校の一覧なども参考にしつつ、学校ごとのカリキュラムや卒業後の進路実績、認定状況を十分に調べてください。中立的な立場で情報を集め比較検討することで、きっとご家庭の教育方針に合った最良のスクールが見つかることでしょう。子どもたちが充実した学びと貴重な異文化体験を通じて、未来に羽ばたいていくことを願ってやみません。